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「明解量子重力理論入門」読了(いや読了とは言えないな) [読書]

吉田伸夫著、講談社。
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量子論と相対論はどうやって統一できるのか、という話。もちろん道半ばなので、どういうアプローチがあってそれがどういう位置づけなのか、というのを原理的な側面に集中して解説してくれている。

が、僕には厳しかった。でも前半は目からウロコものがいっぱいあって、すごく勉強になった。

半年以上前に買ってずっと僕が持ち歩いている鞄の中に入っていた。何度も読み返して、そのたびに難しくてため息をついていた。

第1章で古典論と量子論との関係、第2章で量子電磁気学とくりこみ、第3章で一般相対論がさらっとまとめられている。第4章で、なぜ重力場の量子化が難しいのか、という話で第1部が終わる。

第2部は量子論と相対論を統一しようという具体的な試みとして、ループ量子重力理論、超ひも理論のふたつの成果が語られる。そのあと量子論を相対論的な強い重力場のもとで扱ったブラックホールのホーキング放射について説明して、量子論と相対論の統一によって解かれるであろう宇宙論的な問題として、初期特異点と、なぜ空間は3次元なのか、という話が取り上げられる。

第4章以降はやっぱり僕には難しすぎて「すごく難しい」という雰囲気しかわからなかった。それでもループ量子重力理論と超ひも理論がどういうアイデアに基づいているか、ということぐらいは何となくわかった。

それ以前に、まずしょっぱなから僕にとって目からウロコものがあった。

ニュートン力学では「最小作用の原理」というのがあって、これはニュートンの運動方程式と等価である。作用S
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で、これが最小(実際には停留値)となる経路が解となる。ここでLは系のラグランジアンで、tは時間である。このこと自身は僕も大学で習った。

この本では簡単な粒子の運動に対して、具体的にSを計算して運動方程式の解と一致することが確かめられる。

そのあと、量子力学の話になる。量子力学の対象となるような小さなものは不確定性関係があるので確定的な経路は定められない。そのかわりにある「状態」Pから別の「状態」Qにうつる確率P(Q;P)は計算できて、測定も可能になる。遷移確率P(Q;P)は遷移振幅A(Q;P)から
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によって計算される。そして遷移振幅は
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で与えられる。Sは古典論でも現れた作用であり、ħはプランク定数(を2πで割ったもの)である。 これをありえる経路(path)について足し算すると遷移振幅になる、というのがこの式の意味であり、これが量子論の基本原理である、と著者は言う。

ħは非常に小さな値で、通常のニュートン力学の範囲ではSにくらべて十進で20桁以上の開きがある。古典的な意味でほんのちょっと違うだけでも式-3の和の中の位相はぐりんぐりんまわってしまって、いろいろな経路に対して足すとランダム位相の和になって0になってしまう。しかし、もしSが停留値をとるような経路があればその近傍ではSの値は大きく変わらず、和が0ではないある値になる。すなわち大きなSに対しては式-1が最小値(停留値)となる経路と式-3が0でない遷移振幅になることとは同じことになる。

この話はこの本のはじめの20ページもいかないところにあって、ほんの劈頭というか本題に入る前準備に過ぎない。こういうことは知ってる人にはあたりまえなんだろうけど、僕は初めてきいた。古典論と量子論を結びつけるわかりやすい話で、非常に面白いと思った。おかげで、ニュートン的な運動にもなにか非常に小さな「位相」がまとわりついている、というイメージを持つことができた。僕にとってはほんとに目からウロコだった。

また、いろいろな量がある単位の整数倍になる、つまり「量子化される」ことは定常解固有の現象で、過渡的にはいろいろな値をとるけど十分長い時間が経った後ではある「共鳴パターン」だけが生き残った結果である、という記述がこの本ではなんども現れる。

僕も学生の頃、シュレーディンガーの方程式の解として調和振動子や箱形のポテンシャルの中の粒子なんかの計算をやらされたけど、確かにそれは定常解を計算したものだった。なんとなく僕は原子のように小さいもののエネルギーや角運動量はどんな場合にも整数値しかとらないと思い込んでいた。これもわかってる人には当たり前なのかもしれないけど、これも僕には目からウロコだった。

また、電子どうしの散乱において光子をやりとりするという描像は、摂動展開という計算をわかりやすくイメージにした結果、そう見えるだけだ、と著者は強調する。確かによく考えてみればその通りで、でもどんな本にもファインマンダイアグラムの通りのことが実際に起こっているかのように書いてあるような気がする。

僕は量子力学ではフーリエ領域のほうが実領域より実体感がある、とずっと思っていた。フーリエ領域で考えることで粒子の個数が数えられたりできるし、他のほとんどの計算も実質的にフーリエ領域で行われるのに、実領域ではそう言うメージを持てるものがないし、計算ではほとんど扱われることがない。著者によれば「粒子の個数」は計算を簡単にするためにたまたま採用したモデル(フーリエ展開したひとつの項)で有効になる概念に過ぎない、ということになるんだろうか。

僕は量子論はそれなりにわかったつもりでいたけど、そのイメージは不正確だったということに気がついた。これはすごく大きな収穫。

この本のおかげで僕のイメージでは量子論はますます光の回折の現象に似てきた。光は空間と時間で指定される位置に場の強さの自由度があってそれが位相を持っている。場の強さが重ね合わさって回折パターンを作る。場の量子論ではますますそのイメージに近くなる。光も巨視的に見れば波長は目に見えなくて幾何光学に従ったひとつの経路だけを辿ることになって、幾何光学⇔回折の関係が量子論⇔古典論の関係に似ている。量子論でも場の強さの自由度が、その可能性の分だけ重ね合わさっているということなんだけど、その実体がなになのか、は光よりイメージが難しい。でも電磁場だって電磁気学を勉強する前はなんだかよくわからないものだったので、単なる慣れの問題なのかもしれない。

でもなんで「位相」があるんだろう。位相ということはなにか振動が背後にある、ということだろう。しかも時間的空間的な振動ではなく、作用といったエネルギーに関係する量に振動がくっついている。なにか時空間と同じような、でも別の独立した次元があってその方向に振動している、ということになる。光の場合は、はっきりと電磁場の振動なので位相があるのは当然なんだけど、量子論に現れる「位相」って何の振動なんだろう。不思議だ。なんとなく多世界解釈が正しいような気もしてくる(異なる世界が位相をもって重なりあっているけど、ニュートン力学の範囲では近くの世界でもコヒーレンシがなくて影響しない、というような)。

もう少し書きたいことがあるので、これは続く...
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