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変調弦ギターによるバッハ-その4 [ギター - 変調弦によるバッハ編曲]

さて、すでに30年前の話ではあるが、セルシェルのバッハ演奏を知ってしまった我々は、そのへんに山のように転がっていた乱暴なバッハ演奏に満足できるわけがない。フーガはフーガらしく多声部を独立させて弾きたいし、アルマンドに内省的な深みを与えたいし、サラバンドには係留音の豊富な重層的な和音を、ジーグには生き生きとしたリズムとビートを盛り込みたくなった。しかし経済的な問題(まともな6弦ギターが何台か買えるほど11弦ギターは高い)とコントラ弦の消音と言う別の技術的問題を抱えることからセルシェルのような11弦ギターを使用することはためらわれる。そこで一般的な6弦ギターを使ってこれまでの演奏よりもよりバッハらしい演奏をするにはどうするかを考えてみる必要がある。

そこでどうするか。

まず音域の問題は残念ながらどうしようもない。全体を少し高い調に移調してハイポジションで弾く、と言う手があるが、もともと難しい曲がさらに難易度が増すことになる。そのヴィルトゥオーソを持っているのなら今回のように悩むことははじめからない。その他にロバート・フリップのように5度調弦にする、という方法があるが、これはそれを前提に作られた曲でない限り運指に解決不能な深刻な問題をもたらす。特にバッハのリュート曲に現れる密集した和音のほとんどは発音が物理的に不可能になる。

結局、音域の問題はこれまでのギター編曲と同じように低音部のオクターブ上昇による音域圧縮を行うしかない。この場合、単に音域からはみ出た音だけを圧縮するか、それともまとまったフレーズごと行うかの選択が残されることになる。

次に運指の問題、これが今回のミソであるが、開放弦を出来るだけ使い、左手指の負担を減らすことを考えた。開放弦を使いやすくするためにはその調に出て来やすい音を開放弦に割り当てる。例えばイ長調で3弦のgは開放弦では使えない。その場合3弦の発音はかならず4本しかない左手指の少なくとも1本を消費してしまう。これをf#(fis)にすれば開放弦で弾く可能性が出てくる。曲全体を通して使用頻度の高い音を開放弦に出来るような調性と調弦を選ぶのである。今回、BWV998(プレリュードフーガアレグロ)では3弦をfisに、6弦をDにしてみた。また、BWV1006a(ブルーガー博士の割り振りで組曲4番)は3弦をfisに半音下げてみた。さらに4弦をdisにしてみたがそれはいまいちだった。そういった検討の結果を楽譜に実装したい。

調弦が違えば自ずと運指が違い、そして運指が違えばポジションも違うし、その移動のタイミングも違ってくる。ここで強調したいのは、ポジション移動を解放弦が鳴っているタイミングで行えばレガートさを損なわず、フレーズがブツ切れならずにすますこともできる、ということである。和音の場合でもその構成音のひとつだけでも続いていれば、フレージングは容易になる。そのためには解放弦の音が曲中に、特にポジション移動を伴う場面で現れることが望ましい。

これはどっちかと言えばロックやフォークソングの生ギターでコードチェンジの際に解放弦を鳴らしてしまって音を途切れなくするテクニック(と言うよりはごまかし。Eメジャーの曲にgやdの音が小節の最後に鳴ることで、かえってブルージーな雰囲気が出る場合もあるけど)に似ているかもしれない。しかし、これにより技術的な問題に引きずられがちなフレージングを明快に運べる可能性が出てくる。つまりフレージングに対する技術的問題点の解決を開放弦に担わせようと言うものである。これから具体的に運指をした例を示してみたいと考えている。

まだまだ続くで。


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