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変調弦ギターによるバッハ-その2 [ギター - 変調弦によるバッハ編曲]

J.S.バッハはリュートは弾けなかったようである。しかしバッハが死んだとき財産目録にリュートが1丁あった(リュートは銃やパンツと同じ助数詞)らしいし、弟子にリュートを教えていたと言う記録もあるようである。

当時のリュートはバロックリュートで弦の本数が多く、13コース24弦などというのが普通だったようだ(Wikiに楽器を扱う時間の半分を調弦に費やしたという話がある)。そして弦と弦の音程間隔も短三度から完全四度で、開放専用の低音弦(コントラ弦)以外の弦がニ短調和音になるような調弦(フランス調弦と呼ばれる)だった。弦楽器の中では特殊な調弦を持つ楽器と言え、調弦法はその子孫である現代のギターとはまったく違っている。

バロックリュートよりもさらに古いルネサンスリュートが四度調弦(現代のギターに近い)にもかかわらず、その後のバロックリュートの調弦の音程間隔が狭まっているのは、当時のリュートが独奏楽器としてよりは和音も弾ける通奏低音楽器として位置づけられていたことが原因だろうと思われる。

バッハはこのバロックリュートのために組曲を四曲、その他の独立小品を三曲、そのほかに受難曲やカンタータの伴奏譜などを残していることになっているが、独奏曲の認知は先日取り上げた古いけれども記念碑的なブルーガー博士の労作によるところが大である。新バッハ全集が完結して、より厳密な批判に耐える版ができあがり、旧バッハ全集に比べてリュートの位置づけも明確化(ちょっとだけ参照したが、第10巻にリュート独奏曲はまとめられている)されており、ブルーガー版もすでに古いものとなってしまったが、残念ながらその後新バッハ全集に基づいた批判に耐えるギター編曲版は存在しない(少なくとも私は知らない)。

ブルーガー版は「序」にあるような「近代リュート」を前提に編曲されている。「近代リュート」とは10弦の、上からe'-h-g-d-A-E-D-C-H-Aと言う調弦の楽器で、ようするに10弦ギターの解放で鳴らす4弦を全音に調律したものらしい。これが出版された当時は「今日一般的に行われているリュートの調弦法(「序」から)」だったようだが、現在ではこんな中途半端な楽器は存在していない。

クラビア曲のピアノ編曲が新バッハ全集に従った校正が施されてきているのに、ギターではバッハの意図を無視した独りよがりな解釈による編曲が再生産されてきた(昔、ブルーガー編曲に対してあそこがおかしいここが間違っている等という批判があったが、私の知る限り批判する当人が原典を参照する努力をまったく行っていなかった。これではブルーガー編曲を批判する資格さえない。現在それさえ無くなってしまった)。ひとつの例を一昨日見た。

もっとも、研究者でない我々素人は厳密性よりも、その編曲を通じていかにバッハの音楽に近づくことができるかに興味がある。我々はバッハの書いた音符一つ一つを大切にして自分の指で実際の音にすることでバッハに触れたいと思っている。中途半端でいい加減な編曲は演奏者の意欲をそぐだけでなく、バッハを貶め、結果的に演奏者をバッハから遠ざけてしまう事になるのではないかと心配してしまう。我々としては現代的なバッハ像に基づく実用版の出現を期待したいものである。

今では結構ポピュラーになった10弦ギターを使ってブルーガー翁の「近代リュート」の調律にすればブルーガー版は演奏可能だが、そうではなく、ごく普通の6弦ギターで可能な限りの再現に挑戦してみたい。この話は続く。


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