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光学実験用汎用部品の変遷 [日常のあれやこれや]

先日のアイデアはダイレクトカットレンズの決裁がおりたので、物理的に評価する準備を始めることにした。もう去年暮れからずっとスイッチが入った状態のまま、計算はひと段落させて、こんどは汎用光学部品メーカのカタログとにらめっこしてる。結局この土日もほとんど外に出ずにそうやって終わってしまった。もうそんな週末を断続的に2ヶ月近く過ごしている。

今回はざっくり4つの評価装置を立ち上げる。そのうち2つは素子そのもののパラメータの測定(ひとつは干渉計になる)のためで、残りの2つは動作評価のため。汎用メカと汎用光学素子と僕が図面を描いた少しの加工部品とで、僕が光学系を組んで回路をはんだ付けしてカメラ画像から評価値を計算するソフトを書いて立ち上げる。全部一人でやるつもりでいる。

なんでそこまで自分で全部やるかというと、装置の専門会社に任せるのに懲りたからである。僕は今の会社に移ってすぐのころ、専門の装置屋さんに自動組み立て調整設備を投げる場面に遭遇した。僕がこうしたいと言ったことがちゃんと反映されて、一応動くものが上がってきて今でも量産に使っているんだけど、出来上がった装置を見ていくと僕の気に入らないところがいっぱいあった....

装置の対象である製品調整の最終的な追い込み精度の仕様を±10$\mu$mとしたせいなのか、それとも設備屋さんの趣味なのか、ステンレスやスチールの重い削りもののいたるところに位置決めピンがそれこそ、うじゃうじゃ林立して、高級な光学自動ステージがいくつも積み重なっている。さらにシーケンサ(PLC)のモジュールがパネルの中に1mぐらいの幅でたくさん繋がって、多芯の同軸ケーブルがタコというよりはムカデの足が伸びたようにたくさん絡まってて、エアシリンダがいくつもぷしゅぷしゅ言って、いたるところにある色々なセンサがすべて24V駆動。光学的な検出はGigEカメラとヘッドレスのMac miniがやるけど、UIはシーケンサが制御する液晶タッチパネルになっている。

そりゃあこれじゃあ大きく、重く、値も張るよ。そのとき僕は移ったばかりだったので、こんなものか、と思ったけど、それ以降工場でその装置のメンテナンスをやらされてほんとうにうんざりしてきた。僕の感覚ではゴボウの笹掻きを作るためにチェーンソーを使うようなものに思える。干渉計でもない、せいぜい数十秒の間、数$\mu$mの精度で動いて止まってくれればいいだけの装置には過剰品質である。長年にわたって培われてしまった最適化癖のせいでこの装置を見るたびに、僕は耳の後ろがぞわぞわと疼く。

そもそもその装置の企画が、自動化すれば製品の品質が上がる、というイメージに基づいて始まったものだということを後になって知った。たかだか数立方センチの製品で、自動化なんで数を上げるためならありえるけど、精度をあげたいんだったら人間がやるべきだった、と僕は言ったんだけど後の祭りだった。会社紹介のビデオには完全自動装置によって組み立てられているので高品質である、なんていう文言が入っている。自動組み立てと品質とはなんの関係もなくて、他の条件があって初めて言えるはずなんだけど、誰かがそういう単純化したイメージを植えつけたらしい。

しかしそのイメージはどうやら強固らしくて、生産用の新しい装置が必要になるとすぐまたぞろ自動化装置の話が持ち上がってしまう。こないだ別の調整設備を作る打ち合わせの時に、自動化自動化って餃子メーカじゃないんだから、とこのビデオを見せたら、みんなちょっとムッとしてた。

その自動機を立ち上げたあとは、そういうイメージに逆らって人間が主体的に作業する調整装置ばかりを僕は作ってきた。安い手動ステージと、汎用の光学レールやポストと、一般公差±0.3mmのアルミ加工部品(もちろん位置決めピンなんか生えてない)と、シーケンサの代わりのRaspberry Piと、Mac miniのホストでできていて、エアシリンダもなければ、のたうつ太いケーブルもない(シリンダがないのは人が手で動かすからで、ケーブルがないのはRaspberry Piがセンサやモータのそばにいて、ホストとは無線でデータをやりとりしているせい)。それで機能は十分果たすし、何と言ってもメンテナンスが楽なんだけど、確かに見た目にはいかにも貧相でみすぼらしい。社内にはそもそもそういう見た目がお気に召さない方がおられる。

しかしまあ月産10万個の製品でもない限りは、僕がこの会社にいる間は戦艦大和のような自動機は作らせないと密かに決心している。


いやいや、今回はそんなことを書きたかったんではない。

実は前の会社にいた頃から、僕は汎用の光学部品やそのマウントやステージを大量に使ってきた。実験だけでなく光学測定機や調整機なんかの、1台きりの設備にも使ったので僕が手配しただけでもかなりの量になる。

初めて使ったのは開発に使う光学部品の検査用のセットアップだった。測定した値の辻褄さえ合えば良いので、簡単なものだった。しかも30年前のことなのですべてアナログ。使った汎用のレンズやミラーや、移動ステージの多くはメレスグリオ社の製品だった。

レンズの玉をやるようになって干渉計を次々に作った。当時、ある理由からZygoなどの汎用の干渉計では問題があって、それを避けるためには0から作るしかなかった。そのときは神津精機のステージを使って、鋳物定盤も神津精機に頼んで吹いてもらった(当時は初代の社長がまだご健在で、打ち合わせのあとに作業場に行くとでかい石定盤の上でステージの調整をしている爺さんがいて、この会社はあんな年寄りにミクロン精度のクロスローラの調整をさせてるんだ、と思ってたら、営業の人から「社長です」と紹介されたときは驚いた)。そういった干渉計の数値計算ホストは当時HPのunixワークステーションだった。

そのうち干渉計も小さく安く作れ、ということになってステージはシグマ光機駿河精機製に、定盤は専用でなくニューポート製に、と汎用部品化が進んだ。

レンズやミラーなんかの光学部品で精度の必要なものは専門のところに作ってもらっていた。特に精度の厳しい光学部品は当時ニコンの専門部署に頼んで作ってもらった。素晴らしいものができてきたけど、あるとき「やめることになりました」と担当から伝えられた。それ以来精度ものはいつも悩むことになった。

それほど精度が問題にならない光学部品は1990年代以降、徐々にEdmundをところどころに使うようになってきた。それ以前のEdmundは光学オモチャメーカだったんだけど、プロの使用に耐えるものも作るようになってきた。しかし今でも必要な性能の仕様化がされてなかったりするので気をつけないといけない。

仙台にいたころはシグマ光機にかなりお世話になった。光学有効が大きくて面精度が必要な光学部品($\lambda /10$以下で150×200mmのミラーとか)やそれを支えるホルダやステージが必要になって、かなり無理を言っていろいろ対応してもらった。仙台にいたころ作った装置で今でも使われているものはあるはずである。

会社を移って、こんどは小さなものばかり扱うようになった。$\phi$5mmが大きい、なんて感じで、そうするとこれまでのホルダやステージでは組めても指が入らなくて調整できない、あるいはホルダやステージ同士が衝突する、なんてことが起こるようになった。最近多用しているのはThorlabsである。小型のものが多く、とくに最近急速に品揃えが豊富になって納期が短くなってきた。それなりに高価で、どっちかというと華奢なものが多いんだけど、便利なのでついつい使ってしまう。

30年前使っていたメレスグリオはステージなんかのメカからは撤退してしまった。なんとなく寂しい。

汎用品メーカでもそれぞれ得手不得手があるし、部品の精度だけでなく価格にもそれが現れる。そのせいでいきおい一つの装置にいろんなメーカの汎用品を使うことになってしまう。最近はシグマ光機のステージの上にThorlabsのケージシステムが乗っかって、その中のミラーやダイクロはEdmund製、なんてことがよくある。そういう場合、何が困ると言っていまだにミリとインチが混在してること。

昔のメレスグリオは日本向けにはネジはM3、その間隔は50mm、なんて感じでミリに統一されていた。駿河精機やシグマ光機がミリなのは当然としても、ニューポートでは外形やネジはインチが基本だし、EdmundやThorlabsはミリとインチの両方がある。インチだと焦点距離100mmのレンズの外径が25.4mm、固定用のネジは#4-40、そのピッチが50.8mmなんてことがあって、アメリカではそれが普通らしい。よく間違わないな、と思うんだけど、いや、連中もしょっちゅう間違ってるし。

前の会社で、急遽よその部署の定盤を借りる必要が出てきて、上物を運んで定盤に固定しようとしたらM6のネジがカジって動かなくなった。「インチなの?」「え?そっちはミリかよ?」なんてことがあった。ああいうのは勘弁して欲しい。

どっちでもいいから統一して欲しい。本来ならメートルにすべきだと思うんだけど、痛み分けということで、全然別の単位にしても、ごっちゃになるよりはいいとぼくは思う。例えば焦点距離$1\times 10^{34}$プランク長のレンズの外径が$5\times 10^{32}$プランク長、重さ$2\times 10^3$プランク質量なんてスッキリしてていいじゃん。
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