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ガウシアンビームの光学 - その11 [ガウシアンビーム]

これまででその1「Helmholtzの方程式」その2「平面波解」その3「近軸波動方程式への近似」その4「軸対称方程式」その5「解の仮定」その6「解の具体的な定式化」その7「ビームのエネルギー」その8「積分定数$z_R$の物理的な意味」その9「$z_R$の限界」その10「放物面波解」なんかを順にまとめてきた。

今回は、最後に残った位相の係数と、球面波との比較について.....

3.5.4  ガウシアンビームと球面波の類似性

ガウシアンビームに戻ることにする。前回までの議論で導いた遠いところで見た球面波(式-10:4)や近軸波動方程式の簡単なほうの解(式-10:7)と式-6:9とを見比べると、式-6:9の係数のCとEの部分と全く同じ形をしていることがわかる。つまり$r$に依存しない係数Dをのぞけば位相は球面波と同じということで、式-6:9は光軸上を$R(z)$だけ離れたところからくる球面波のように見える、ということである。

その波面(位相が同じ値をとる面、等位相面)は半径が$R(z)$の球面の一部のように見える。$R(z)$をガウシアンビームの曲率半径と呼ぶ。$R(z)$は \begin{equation} R(z) = z\left( 1+ \left( \frac{z_R}{z} \right)^2 \right) =z+\frac{z_R^2}{z} \end{equation} だったので、$z_R$を基準に3つの領域にわけて考えてみると、おおよそ \begin{equation} R(z) = \left\{ \begin{array}{cl} \infty & |z| \ll z_R \mbox{ 原点付近} \\ 2z_R & |z| \approx z_R \\ z & |z| \gg z_R \mbox{ 原点から遠い} \end{array} \right. \end{equation} である。つまり原点付近ではほぼ平面波(無限に遠い光源からの波面)であり、$z_R$の付近では原点に対して反対側にある光源から来るように見え、それより遠くなると原点からの球面波のように見える、ということになる。

3.5.5  球面波との違い

それはそれとして、ずっと前みたように場は$x$-$y$平面でガウシアンになっていて、原点で一番細い。つまり$z$方向のマイナス側の遠くて広いところから伝播してきて原点できゅっ、とエネルギー密度があがってまた広がって薄まっていく、というようなちょうどレンズの焦点位置のようになっている、ということがわかる。

この前のセクションでガウシアンビームは原点以外では等位相面が球面波のように見える、ということを示した。しかしエネルギー保存の面から見ると、以前計算したように伝播方向に垂直な平面で積分したときにエネルギーが保存しているが、球面波では任意の立体角で切り取られた球面上で積分したときにエネルギーが保存する。

つまり、ガウシアンビームも球面波も原点に向かってすぼまっていってエネルギー密度が高くなって、原点で密度は最大(球面波では無限大)になってそのあとは逆に広がっていく、という見方をすればよく似ているけど、エネルギーが保存する面はさっき計算したようにどこでも無限平面であり、球面波のような特定の立体角内部の球面上だったりはしない。つまり球面波と違ってガウシアンビームは原点を特別扱いしないということになる。

この特徴は重要であり、ガウシアンビームの応用を考える上では便利な特徴である。

3.6  Gouy位相

さて式-6:9の最後に残った係数Dを考えてみる。

この係数は \begin{equation} \exp \left(i \zeta(z) \right) = \exp \left( -i \tan^{-1} \frac{z}{z_R} \right) \label{gouyphase} \end{equation} で、$z$にしか依存しない、しかも位相に関してだけの係数で、これをプロットしてみると図のようになる。
0615gouyphase.png
図は波長=633nm、$z_R=10$mmの場合で、図中赤線がその位相の値である。図中いっしょに$1/e^2$幅を重ねて書いてある。式を見ればすぐわかるけどRayleigh領域の周辺で位相が$\pi/2$変化することになる。この位相変化を Gouy位相(Gouy Phase)と呼ぶ。

これは近軸波動方程式をちょっと書き換えてみて \begin{equation} \frac{\partial}{\partial z} \psi(x,y,z) = \frac{i}{2k}\bigtriangledown^2_T\psi(x,y,z) \nonumber \end{equation} としてみるとわかる。右辺の$\bigtriangledown^2_T$は$z$の微分を含んでいない。定性的には$x$-$y$面内の場の変化が、左辺の$z$方向の位相変化を引き起こす、と読める(右辺に$i$が含まれている)。

ガウシアンビームは原点付近でだけ$x$-$y$面内の場が大きく変化するので、まさしくここで$z$方向の位相が変化するというのはもっともらしい。

ガウシアンビームの強度だけを扱っていればあまり気にすることはないのだけど、当然平面波では存在しない位相変化で、同じ光路長でもウェストを含む光路だと位相が反転するので、共振器を設計する人とかには重要である。面白い現象である。

そしてガウシアンビームは遠くから見ると球面波と位相はそっくりだ、ということを示したが、原点を挟んで比較してみると、ガウシアンビームはGouy位相のために$\pi$だけ違って見える(同じ光路長に半波長だけ足りない)、ということになる。僕はこれを知ったとき球面波と違ってガウシアンビームは近似方程式の解であるにもかかわらず、いかにも物理的にありそうな、もっともらしい場に思えた。つまり原点で破綻する球面波はギチッと硬くてガウシアンビームはしなやかにいなす、というイメージで、こういうことでもないと原点でおかしなことが起こるのは当たり前、という気がしてなんだかすごく納得した。まあ、勝手なイメージなので他の人がどう思うかはわからない。

ちなみにGouyをGuoyと書いている教科書がたくさん見つかる(英語の教科書に多い)が、もとはフランス人の物理学者の名前でこの人はGouyが正しいらしい。どうやらGuoyと言う名前の人もいるらしいので間違うようである。どっちにしてもどう発音すればいいのかよくわからないけど。
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