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ガウシアンビームの光学 - その10 [ガウシアンビーム]

ガウシアンビームの話。仕事で半導体レーザを光源にした光学製品を扱ってて理想状態としてのガウシアンビームは基本の「キ」だと思って整理し始めた。こうやって続けてると定性的な直感が案外養われてくるような気がする。それは気のせいかもしれないけど、悪いことではないと思って続けることにする。これまででその1「Helmholtzの方程式」、その2「平面波解」、その3「近軸波動方程式への近似」、その4「軸対称方程式」、その5「ガウシアンの形を仮定した解」、その6「解の具体的な定式化」、その7「ガウシアンビームのエネルギー」、その8「積分定数$z_R$の物理的な意味」とその9「その限界」なんかを順にまとめてきた。

今回は、位相に関して考える準備としてちょっと寄り道...

3.5  他の解との比較

これまではガウシアンビームのエネルギー(すなわち光強度)だけに注目してみてきた。

つぎに式-6:9の位相のほうも詳しく見たいんだけど、その準備として近軸波動方程式のもう一つの解を導いておくことにする。少し脱線するがガウシアンビームの性質に結びつく考察が得られるので進めておく。

3.5.1  もう一つの解

さて、式-5:1とよく似た次の関数を仮定する。

\begin{equation} \phi_0 \propto F_p(z) \exp \left(i\frac{k r^2}{2g_p(z)} \right) \label{assumption1} \end{equation}

式-5:1との違いは一点、expの中身が虚数になって位相を表すようになってほしい、というような関数になっている。あとは全く同じ。$r$に関して2次なのもガウシアンビームの場合と同じで回転対称性を保つ最低次だからである。この場合あきらかにエネルギーを光軸付近に限定する係数がないので、平面波解のような無限に広がった解にしかならないことはあきらかである。

これを式-5:1をやったのと同じように回転対称な近軸方程式に代入すると \begin{equation} \left( -\frac{k^2r^2}{g_p^2(z)} +i \frac{2k}{g_p(z)} \right)\phi_0 + \left( \frac{2ik}{F_p(z)} \frac{dF_p(z)}{dz} + \frac{k^2r^2}{g_p^2(z)}\frac{dg_p(z)}{dz} \right) \phi_0 = 0 \nonumber \end{equation} まるで間違い探しみたいだけど、$\phi_0$を落として注意しながら$r$に関して整理して \begin{equation} \frac{k^2}{g_p^2(z)} \left( -1 + \frac{dg_p(z)}{dz} \right)r^2 + 2k \left( -\frac{i}{F_p(z)} \frac{dF_p(z)}{dz} +i \frac{1}{g_p(z)} \right) = 0 \nonumber \end{equation} となって、二つの方程式 \begin{align} \frac{dg_p(z)}{dz} &= 1 \nonumber \\ \frac{dF_p(z)}{dz} &= -\frac{F_p(z)}{g_p(z)} \nonumber \end{align} を解けばいいということになる。ひとつめは \begin{equation} g_p(z)=z-z_0 \end{equation} で($-z_0$は例によって積分定数に名前を付けたもの)、これを使ってふたつ目は \begin{equation} F_p(z)=\frac{C_2}{z-z_0} \end{equation} となる。従って$\phi_0$は

\begin{equation} \phi_0 e^{ikz} = \frac{C_2}{z-z_0} \exp \left(i \frac{k r^2}{2(z-z_0)} \right) \exp (i k z) \label{parabolicwave} \end{equation}

となる。こっちのほうが簡単だけど、全空間に一様に広がった場になっている(式を見ればガウシアンビームの解で$z_R$を純虚数においてもこの解が形式的に得られるが、このほうが物理的な意味がわかりやすいと思う)。これが具体的にどんな場なのか次に考える。

3.5.2  球面波との比較

さっきの簡単なほうの解がどういうものか考えるために、さらに脱線してちょっとの間、球面波を考える。原点にある点光源から発生する球面波は

\begin{align} E_s(x,y,z) &\propto \frac{E_0}{R} \exp \left(i k R \right) \label{sphericalwave} \\ R &= \sqrt{x^2+y^2+z^2} \nonumber \end{align}

と書ける(スカラとして書いてあるが、原点から$(x,y,z)$を見る方向に垂直な電場のある成分だと思ってほしい)。式-\ref{sphericalwave}の$R$は原点からの距離を表していると同時に、球面波の等位相面の曲率半径でもある。

また、式-\ref{sphericalwave}は原点を除いてスカラのHelmholtzの方程式を満たす。それは式-1:6に代入してみればわかる。と、簡単に書いたけど非常に煩わしい。波動方程式を極座標に書き換えて代入するか、$x$、$y$、$z$それぞれの微分から同じ形の項が出てくるのに注意してまとめてやるとうまいぐあいに余分な項は消えてしまうことが確認できる。

ここで原点から$z$の方向にずっと遠い位置でこの球面波を見るとする。 \begin{equation} r^2 = x^2+y^2 \nonumber \end{equation} として$r \ll z$の場合に$r$で展開してその2次までとったとすると

\begin{equation} R \approx z + \frac{r^2}{2z} \label{defocusappro} \end{equation}

と書ける。$r \ll z$なので第2項は \begin{equation} R \approx z + \frac{r^2}{2R} \nonumber \end{equation} としてもかまわない。とすると

\begin{equation} E \propto \frac{1}{R} \exp \left(ikz \right) \exp \left(i \frac{kr^2}{2R} \right) \label{defocus} \end{equation}

となる。この近似は光学の、とくに収差論の分野でデフォーカス(defocus、焦点位置ズレ)による位相差を2次で表すのと全く同じである。

さて、これをさっき導いた近軸波動方程式の簡単なほうの解、式-\ref{parabolicwave}と比べてみると、球面波の発生源が$(0,0,z_0)$にあると考えて \begin{equation} z-z_0 \approx R \nonumber \end{equation} とすれば全く同じ形をしていることがわかる。

つまり簡単なほうの解は球面波を発生源からずっと遠い位置で見たのと同じだ、ということになる。この解を放物面波paraboloidal waveと呼ぶ場合がある(が、主に回折を問題にする光学屋にとっては、球面波と同一視するのが普通である。普通の光学屋はFraunhofer回折やせいぜいFresnel回折ぐらいしか扱わなくて式-\ref{defocusappro}の近似が成り立つ範囲しか考えが及ばない)。

平面波はそのままもとの波動方程式と近軸波動方程式の両方を満たすことを以前確認した。近軸波動方程式は$z$ 方向には普通の波とほとんど同じで$z$に関してゆっくりにしか依存しない、という条件で波動方程式から導いた。球面波は、発生源(原点)付近では場の強さが急速に変化するのでその条件は満たさないが、それからずっと離れると$z$の依存性はゆっくりになって、簡単な近似を入れることで近軸波動方程式の解になって、それはすなわち放物面波だ、ということである。当たり前の話ではあるけど、自然がつじつま合わせをしているようで面白い。

3.5.3  どうでもいい思い出話

また、どうでもいい昔話なんだけど学生の頃、球面波は原点でどうなっているんだろうと思ったことがあった。球面波は原点では場の量は発散する(Kirchhoffの回折積分ではGreen関数がまるで実在の場のように扱われるけど)。

こういう場を作り出すのって電子みたいな点電荷が電荷量を正負に振動させればできるだろうけど、それってあり得るとは思えない。導体球の表面電荷が同時に振動すればできるけど、その表面電荷を同時に振動させるためには、結局導体球の中心に電荷の発生源がないといけないが、それでは電荷の保存則を破ることになる。

それ以前に球面波では偏光を考えると、どこかにヘソ(臍)みたいなところ(偏光方向をつじつま合わせする点、例えば赤道で経線に沿った偏光では極で矛盾する。赤道で緯線に沿っていても極では同じように矛盾が起こる)が無いとおかしいような気がする。連続に偏光方向を変えていくとヘソの無い球面波はできるのか、というのを考えたけどよくわからなかった。もしヘソがある場合、原点ではどうなってるのか?

また、波動方程式は時間に関して対称なので中心に向かって進む波も解になる。位相も含めて内側に進む球面波を作ることができたら、中心では場は発散する。でももちろんそれは場がスカラの場合で、偏光を考慮するとさっきの「ヘソ」の話と同じで、球対称に収束する球面波はありえない、ということになって場は発散できない。そういう意味で空間はうまくできている。スカラの場で波動方程式と同じ形の方程式に従う場ってあったっけ?

双極子振動でできる電磁波はありえるだろうけど、球面波はそもそも存在しないのではないか、と思っていた。

例えば、もし電荷が現れたり消えたりするような体積無限小の「電荷の発生源」があった場合、それによる放射場の偏光はどうなろうんだろう?対称性から考えると$k$ベクトルの向きを向かないとおかしいけどそれではMaxwellの方程式を満足できない。電荷の保存則を破るから考えてはいけないんだろうか?

そんなことを考えながら結局良くわからずにほったらかしになった。それから30年以上経った今はわかっているかというと、こんな簡単なことでさえなんにもわかっていない。困ったもんだ。
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