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ガウシアンビームの光学 - その9 [ガウシアンビーム]

ガウシアンビームの話の続き。その1「Helmholtzの方程式」、その2「平面波解」、その3「近軸波動方程式への近似」、その4「軸対称方程式」、その5「ガウシアンの形を仮定した解」、その6「解の具体的な定式化」、その7「ガウシアンビームのエネルギー」、その8「積分定数$z_R$の物理的な意味」なんかを順にまとめてきた。

今回は、$z_R$の限界について...

3.3  ビームの広がり

ガウシアンビームは$z$方向に原点から離れるとピーク強度は下がって$z$に垂直な方向に広がっていく。原点から十分遠いところ($|z| \gg z_R$)での広がり方を考えてみる。その目安としてはある$z$でのガウシアンの$1/e^2$半径が、$z$を大きくするに従ってどのくらい大きくなっていくか、で見積もることにする。つまりエネルギーが集中(全体の約0.95 $\approx {\rm erf}( \sqrt{2})$、${\rm erf}(z)$は誤差関数)した半径がどうなるかを目安にする。

ある$z$のところでのガウシアンの$1/e^2$半径は$w(z)$だったので、この下の図にあるようにそれが光軸から離れていく角度を$\theta$とすると(図はより広い範囲を表示しているだけで、前回の図と同じ$z_R=10$mmの場合である)

0603divergence.png

\begin{align} \tan \theta &= \lim_{z \rightarrow \infty}\frac{w(z)}{z} \nonumber \\ \theta &\approx \lim_{z \rightarrow \infty} w_0 \sqrt{\frac{1}{z^2}+ \frac{1}{z_R^2} } \nonumber \\ &= \frac{w_0}{z_R} \end{align} これは他にも

\begin{align} \theta &= \sqrt{\frac{2}{k z_R}} \nonumber \\ &= \sqrt{\frac{\lambda}{\pi z_R}} \nonumber \\ &= \frac{\lambda}{\pi w_0} \label{divergence} \end{align}

などと書ける。これも、当然$z_R$が決まると決まってしまって、$z_R$が小さくなるほど広がり角$\theta$は大きくなる。

これはちょうど円形開口のレンズで集光したときのようすとよく似ている。レンズのN.A.($\approx \theta$)が大きいほど集光点のスポット半径($w_0$に対応する)は小さく、焦点深度($z_R$に対応する)は浅く(短く)なる。もちろんこれらの現象はどちらも回折という同じ原理に基づいている(さらにそのもとをたどれば波動方程式に行き着く)ので、当然である。

ついでに、一般的な広がり角$\theta_U(z)$を考えてみると \begin{align} \theta_U(z) &= \frac{\partial w(z)}{\partial z} \nonumber \\ &= \frac{w_0}{z_R} \frac{1}{\sqrt{1+ \left( \frac{z_R}{z} \right)^2}} \end{align} となって、どの部分でも$\theta_U(z) \lt \theta$である。とくに$|z|\lt z_R$では$\theta/2$以下となって、それ以外の領域に比べてほとんど広がらない、ということからRayleigh領域を焦点深度、あるいはCollimated Range(平行光領域)と呼ぶことがある。

また少しだけ脱線するけど、曲率半径$R(z)$は等位相面を表していた。この等位相面に対して垂直な方向に光は進む、というのがホイヘンスの原理からの直接の帰着だけど、その方向を$\theta_R(z)$とすると、$R(z)$は波面の半径なので \begin{align} \theta_R(z) &= \frac{w(z)}{R(z)} \\ &= \frac{w_0 \sqrt{1+(z/z_R)^2}}{z(1+(z_R/z)^2)} \nonumber \\ &= \frac{w_0}{z_R}\frac{1}{\sqrt{1+ \left( \frac{z_R}{z} \right)^2}} \end{align} となって、$\theta_U(z)$に一致する。これはつまり強度的に特定の点($1/e^2$の位置)の進む方向と、波としての進む方向が一致している、ということである。一見当たり前のように思えてしまうけど実は、一般的に成り立つわけではない。普通の波は伝播していくにつれて強度分布はいろいろに変化してしまうので、等位相面と強度(あるいは場の大きさ)とは簡単な関係にはない。このことはガウシアンビームは回折してもガウシアンビームのままであることと直接関係している。回折の話はあとでする。

3.4  $z_R$の下限

前回の最後でビームはいくらでも細くできるのか?という疑問を呈した。$z_R$はもともとただの積分定数だったので、正の実数でありさえすればどんな値でもとりえる。従って$z_R$をどんどん小さな値にすると$w_0$はいくらでも小さくなる。

しかし式-\ref{divergence}を見ると

\begin{equation} z_R < \frac{4 \lambda}{\pi^3} \label{maxtheta} \end{equation}

の場合には、$\theta$は$\pi/2$を超えてしまって広がり角としての意味がなくなってしまう。

そもそも近軸波動方程式を導く過程で$\psi$の$z$に関する依存性はゆっくりだとした。$z_R$は$z$方向に関してビームが絞られる範囲を表していた。従って式-\ref{maxtheta}のような場合はそもそも近似が成り立っていない($z_R$が波長のオーダ)ということになる。

\begin{equation} z_R \gg \lambda \label{existencecond} \end{equation} でなければ$\phi$に対する仮定は正しくない。従って式-\ref{existencecond}を満たしていないガウシアンビームであってもも形式的には近軸波動方程式の解であるが、原点付近では近似で落とした2階微分が大きくなって無視できなくなってしまうので、このような場を議論するには厳密な波動方程式に立ち戻らないといけない、ということになる。

また、よくある議論だけど、$z_R$が波長に対してどのくらい大きければガウシアンビームと言っていいか、というのは問題にしている精度による、ということになる。


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