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「銅のスプーン」の記事 [日常のあれやこれや]

ちょっと前の記事だけど「デイリーポータルZ」のべつやくれいさんの「銅のスプーンでスジャータアイスに挑む」が面白かった。

僕は甘いものが苦手で、カップアイスなんて自分で進んで食べたことなんて三十年以上前、他人から勧められてしかたなく年に1回食べるかどうか、たまに女房が買ってくるハーゲンダッツの一番小さなカップが冷凍庫の中で何週間もなくならない、というようなものなので、記事にある新幹線の車内販売のスジャータアイスなるものがどのくらい硬いのか知らない。僕が新横浜を出てすぐ買ったとしても新神戸では1/4も減ってなくて、残りは全部溶けてどろどろねちゃねちゃのゾンビ映画にでてくるようなものになるだろう。

話を戻して、もしスプーンが銅とステンレスでできていたなら、熱伝導率は銅が0.037W/m℃で、ステンレスがSUS304だったら0.0016W/m℃なので実に20倍以上の違いがある。スプーンの持ち手の断面積はたいして大きくないだろうからどのくらい違いが出るのかわからないと思っていたけど、面白いコマがあった。
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べつやくれいさんの使っているサーモグラフィカメラは、輪郭を撮るカメラと低分解能の赤外線カメラの像を重ね焼きするタイプのものらしい。光軸があっていなくて輪郭に対して赤外線像が下にずれている。画像からは右の普通のスプーンの温度が室温に近くて、左の銅のスプーンはほぼアイスの温度になっている、つまり銅のスプーンはアイスの温度を奪っている、とみるべきで、実はなにも困ることはなかった、ということである。

この直後に両手をカメラで見れば、スプーンを握っていた部分の左手は温度が低く、右手はなんともない、ということがわかったはずである。指表面の熱伝導率が十分高くて、しかも体温が50℃より高ければべつやくれいさんの思った通りの画像がとれたかもしれない。

そもそも新幹線のなかにサーモグラフィカメラを持ち込んで温度をはかること自身「やられた」という感じである。僕だったら炎天下の公園の砂場で蟻を焼き殺している子供から虫眼鏡を奪い取って、そのレンズの収差を干渉測定しないといけない。あるいはコンサートなんかでのレーザによる演出の現場に分光器をもちこんで「この緑は1064nmの2次高調波ですね」なんて言わないといけない。

「デイリーポータルZ」の記事では林雄司氏とならんでべつやくれいさんは僕のお気に入り。お二人はご夫婦なんだよな。サーモカメラも実はご亭主の提案なのかな。
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コメント 2

とあるエンジニア

光学関連で検索した際にこちらのブログを拝見し,以来ちょくちょく読ませていただいております.

銅とステンレスの放射率はステンレスのほうが相当高いので,温度というよりはその影響が高いようにも見えます.見方によってはステンレスのスプーンに撮影者からの輻射が鏡面反射しているようにも見えます・・・サーモグラフィは業務でたまに使いますが,いろいろと難しい印象があります.

最近はiphoneにつけられるサーモグラフィが数万円で売っていますので,引用ブログの著者の方はそれを使われているのでしょうね
by とあるエンジニア (2017-05-28 15:17) 

decafish

コメントありがとうございます。
おっしゃる通りでした。
銅とステンレスでは赤外の吸収係数は一桁近く違っていました。銅は数%しかないのでこの違いの方が支配的(同じ温度でも赤外ではステンレスの方がずっと明るく見える)ですね。

実は僕も昔仙台にいたころ、表面の微細構造で放射制御するという開発テーマを持っていて、簡易評価にサーモグラフィを使おうとしたことがありました。微細構造があると赤外領域の吸収カーブが変な形になるせいで、サーモグラフィのデータは結局役に立たなくて真面目に赤外吸収を測定するしかない、ということがわかりました。

もっともらしい絵を見せられると信用してしまうのですが、気をつけないといけない、ということです。技術屋にとっては大切なことですが、忘れないようにするのは結構難しいです。

そうするとやはりべつやくれいさんは、サーモグラフィを使うならスプーンではなく、スプーンを持っていた手をサーモグラフィで比較すべきだった、ということでしょうか。
by decafish (2017-05-28 17:52) 

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