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ガウシアンビームの光学 - その7 [ガウシアンビーム]

ちゃんと続いているガウシアンビームを自由空間の波動方程式から導こうと言う話。その1でHelmholtzの方程式、その2でその解として平面波、その3では近似を入れた近軸波動方程式、その4では軸対称解を探すために方程式を変形、その5ではガウシアンの形を仮定して軸対称な近軸波動方程式に代入して、その6では解を書き下して物理的にわかりやすい形(のはずだけどまだわからない)に変形した。

今回は得られた解の特徴をみるために、まずエネルギーを計算してみる....

3  ガウシアンビームの性質

前回で近軸波動方程式の一つの解としてガウシアンビームを導いた。この解の性質をいろいろ見てみる。

ところで、前にも書いたけど、平面波解はHelmholtzの方程式と近軸方程式の両方を満足するけど、ガウシアンビームは$z$が$x$、$y$とは非対称になっているので、あきらかにHelmholtzの方程式を満足することはできない。近軸方程式が近似の方程式なので当然なんだけど、そのため近似解としての制限がつくはずである。

たとえば、原理的な問題として、同じ$z$方向に平面波的に伝播する解は重ね合わせがきくが、他の方向を向いたふたつの解は同時に同じ近軸方程式を満たすことができない。これは方程式の対称性が近似を入れたために崩れたからで、場の線型性がなくなったわけではもちろんない。当然もとのHelmholtzの方程式ではそんなおかしなことは起きないで、解であれば重ね合わせに問題はない。しかしガウシアンビームの解はついさっき書いたようにHelmholtz方程式を満足できない。どうすんだ?、ということになる。

これは一番トリビアルな問題だけど、近似を入れたことを忘れて、解のおかしな振る舞いになやまされる、ということがないようにしないといけない。

しかし、こう書くと「近似は悪」みたいにとる人がときどきいるので、弁解しておく。近似の有効範囲はいつも意識していないといけないけど、的確な近似は理解の役に立つだけではなく、それ自身美しい。ガウシアンビームはその最も簡単な例だと僕は思っている。

ということでどこに制限が現れるのか注意しながら見てみる。

3.1  ガウシアンビームのエネルギー

まずガウシアンビームのエネルギーを簡単に計算してみる。

$\psi_0$は電場の一つの成分(例えば$E_x$)に比例する量だったので、エネルギー密度$U(r,z)$は \begin{equation} U(r,z) \propto E_x{E_x}^\dagger \propto \psi_0 {\psi_0}^\dagger \nonumber \end{equation} である(もしほかの成分$E_y$や$E_z$があってもこの場合は足し算するだけである)。もちろんここの$E_x^\dagger$は$E_x$の複素共役である。

$U(r,z)$の中身を書くと、expの肩に虚数が乗っかってる係数は落ちるので

\begin{equation} U(r,z) \propto \frac{w_0^2}{w(z)^2}\exp \left(-2\frac{r^2}{w^2(z)} \right) \label{energydensity} \end{equation} となる。 $U(r,z)$の原点付近の様子を下の図に示す(やっと図がでてきた)。図の左下から右上に向かって伝播している(あるいはその逆)様子である。

0523energy3d.png
図は波長633nm、$z_R=10$mmの場合で、横軸の単位は、$z$方向はmm、$r$方向は$\mu$mである。従って実際のアスペクトは$z$の方向に6000倍に細長くなっている。

図中黒いメッシュ線はぜんぶガウシアンの形になっている(「どこを切っても金太郎」である)。

こいつを$z=z_0$の平面、つまり$x$-$y$平面全体で積分してみる。その定数項をのぞいた部分を$U(z_0)$とすると \begin{equation} U(z_0) = \int_A U(r,z_0) dA \nonumber \end{equation} で、ここで$A$は$z$軸に垂直な無限平面である。 \begin{align} U(z_0) &= \frac{w_0^2}{w^2(z_0)}\int_0^{2\pi} \!\!\!\! \int_0^{\infty}\exp \left(-\frac{r^2}{w^2(z_0)} \right)r \;dr d\theta \nonumber \\ &=\frac{w_0^2}{w^2(z_0)}\frac{2\pi w^2(z_0)}{4} \nonumber \\ &= \frac{w_0^2 \pi}{2} \end{align} となって、$z_0$に依存しなくなる。つまり、伝播方向に電磁波としてのエネルギーは保存しているということになる。

それはすなわち、波動方程式から出発して、そのエネルギー保存則を破綻させるような近似にはなっていない、ということである。それはちょっと考えると当たり前のように思えるけど、どんな近似でもそうなるわけではない。そのへんは近似の機微、というか面白さでもある。

そうすると、ガウシアンビームのたった一つのパラメータである$z_R$とは何なのか、を物理的に考えないといけなくなってきた。次回はそこを突っ込むことにする。


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